大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和28(あ)774 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人宗宮信次の上告趣意第一点について。

刑訴法が訴因及びその変更手続を定めた趣旨は、審理の対象、範囲を明確にして

被告人の防禦に不利益を与えないためと解されるから、裁判所は、審理の経過に鑑

み、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がないものと認めるときは、公訴事

実の同一性を害しない限度において、訴因の変更をしないで訴因と異る事実を認定

しても差支えないものであることは、当法廷の判例とするところである(昭和二九

年一月二一日当法廷判決判例集八巻一号七一頁以下、同年同月二八日当法廷判決判

例集同巻向号九五頁以下参照)。そして、本件では、所論摘示のごとき詐欺の公訴

事実に対し第一審弁護人は、第一回公判で所論のごとく横領で審判さるべきである

旨主張して証人の申請をし、第一審裁判所は、該証人を取り調べた後、何等訴因、

罰条の変更手続を経ることなく、弁護人の主張のとおり横領の事実認定をした上、

刑法二五二条一項を適用処断したものである。されば、第一審の措置は、右判例に

照し少しも違法ではなく、これを認容した原判決も正当に帰し、所論は採るを得な

い。

同第二点、第三点について。

所論は、判例違反又は違憲をいうが、原審で主張、判断のない第一審における単

なる訴訟法違反を新らたに当審で主張しこれを前提とするに過ぎないものであつて、

刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、昭和二六年一一月二〇日当裁判所規

則一五号による改正後の刑訴規則四四条によれば、所論証拠調又は告知の手続は公

判調書の記載事項ではないから、同調書に記載がないからといつて、所論の手続が

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なされなかつたとはいえないこというまでもない)。

よつて、刑訴四〇八条、一八一条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとお

り判決する。

昭和三一年一二月二七日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

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